わたしは先日,わたしの存在論の到達点として,『「系−個」存在論』を作成した。
その中で,この存在論の類型になるものの一つとして,「空観(くうがん)」を取り上げた。
しかしその記述は,全体との釣り合いから,どうしてもひじょうに要約した内容のものになる。
そこで,「空観」について少し丁寧な論が必要であるという思いから,本テクストを作成することにした。
本テクストは,2010年3月に「空観」の存在論の押さえとして『般若心経』の表題でつくったテクストに,今回新たにつぎの二つを加えるものである:
「はじめに」
「「色即是空 空即是色」は, 物理」
併せて,表題につぎに副題をつける:
わたしは,若いときから,存在論は『般若心経』の「色即是空 空即是色」がいちばんよいと思ってきた。
実際,物理学が示す「存在のマクロ・ミクロ階層構造」と,これは合致する。
わたしは無宗教の者なので,わたしにとっての『般若心経』のテクストは,「菩薩」云々の記述を除いたところのつぎのものである:
| 色不異空 空不異色 |
色は空に異ならず、空は色に異ならず。 |
| 色即是空 空即是色 |
色は即ちこれ空、空はこれ即ち色なり。 |
| 受想行識 亦復如是 |
受想行識もまたまたかくのごとし。 |
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| 是諸法 空相 |
この諸法は空相にして、 |
| 不生不滅 |
生ぜず、滅せず、 |
| 不垢不浄 |
垢つかず、浄からず、 |
| 不増不減 |
増さず、減ぜず、 |
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| 是故 |
この故に、 |
| 空中 |
空の中には、 |
| 無色 |
色もなく、 |
| 無受想行識 |
受も想も行も識もなく、 |
| 無眼耳鼻舌身意 |
眼も耳も鼻も舌も身も意もなく、 |
| 無色聲香味觸法 |
色も声も香も味も触も法もなし。 |
| 無眼界 乃至 無意識界 |
眼界もなく、乃至、意識界もなし。 |
| 無無明 亦 無無明盡 |
無明もなく、また、無明の尽くることもなし。 |
| 乃至 |
乃至、 |
| 無老死 亦 無老死盡 |
老も死もなく、また、老と死の尽くることもなし。 |
| 無苦集滅道 |
苦も集も滅も道もなく、 |
| 無智 亦 無得 |
智もなく、また、得もなし。 |
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これは,存在論であり,「空観(くうがん)」と呼ばれる。
わたしはこれをさらに,物理の論に見なす。
そして「存在のマクロ・ミクロ階層構造」がその物理というわけである。
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